幸者堂
亡国の王女

序章

親愛なるマルシュカ・ドルマンへ

戦争は終わった。 全てが終わってもなお、何度も僕は君のことを思い出す。君にもう一度会いたくて仕方がない。 僕は君の願った世界を作れているのだろうか? 破滅の魔女シャローンの復活は誰にとっても記憶に新しいだろう。彼女は世界を滅ぼそうとした。空が裂け、すべてが終わるその時を目撃しなかった者はいない。 だが、その破滅の元で何があったかを知るものはごく僅かだ。 シャローンを復活させたのは他でもない、僕らの友人であるイリニアであった。彼女はいたって普通の人間だった。お腹は空くし、寝坊もする。甘いものが大好きで、戦争を憎んでいた。 彼女は誰よりも世界を愛し、世界を救おうとしていた。それなのに、彼女は最後には滅びの道を選んでしまった。 未だにあの日々の傷は癒えない。失われたものはもう戻らない。けれどもあの日の覚悟が間違いだったとも思わない。 この物語はマルシュカ・ドルマンとイリニア・ローズ・サーベリアの遺志に報いるために書かれた。