幸者堂
文芸部の日常

第2章 遠野譲治の螺旋的な恋路 · 第05話

ゲームセンターにて

 僕は文芸部の他に将棋部もやっていて、その将棋部の帰りのことだ。  寄り道として、文神中央駅近くのゲームセンターにやってきた。  そこは市内では最大規模のゲームセンターで、多種多様な機種がずらりと並んでいる。  奥の方に格闘ゲームがある。デザインが昭和っぽくてレトロチックだ。今日の僕はそれが目当てだった。  途中、クレーンゲームや音ゲーがあって、その先のメダルゲームのコーナーで誠司に会った。 「あれ、誠司?」 「おう、遠野か。お前もゲームしにきたのか?」 「まあね。で、誠司はメダルゲームを?」 「ああ。生憎、全部擦っちまったよ、チクショ」 誠司は楽しそうに悪態を吐いた。  僕はその理由が気になって 「誠司、もしかして負けたのに楽しいの?」 「ん? ああ、そうかもな」 「なんで?」 「なんでって言われてもなぁ……ゲームは楽しむためにあるだろう?」  ふと、僕は先日の冬原さんへの失恋を思い出した。  彼女は誠司が好きだった。僕じゃなく彼が。確かに誠司は顔が良いし、頭もそこそこ良い。  でも、多分そこじゃない。  誠司は捻くれた性格をしているけれど、彼は今と向き合ってる。誠実に生きている。だから彼は悪態を吐きつつも、ゲーム本来の目的を忘れちゃいないんだ。  多分そこなんだろうな、と僕は思う。  対する僕は頑張ってイケメン(傲慢)になったけど、それは結局仮面を被った姿でしかない。  やれやれ、僕には心と心でぶつかり合う誠実さがなかったのかも知れないね…… 「ねえ、誠司。久しぶりにあの格ゲーで勝負しない? 負けた方がラーメン奢りで」 「ほほう、望むところだ」  僕は自然体で素敵になろうと心に誓った。