幸者堂
文芸部の日常

第2章 遠野譲治の螺旋的な恋路 · 第03話

失恋は連鎖する。甲

 唐突ではあるが、僕は春の体育祭で骨折した。恥ずかしい事に単なる四百メートル走で転び、足首を折ってしまったのだ。  本当なら活躍して、冬原さんに認められたかった。  認められれば告白の成功率が上がるんじゃないかなって、今思えば安直な発想。  しかし現実は違った。  夕日の照らす放課後の教室で冬原さんに告白する代わりに、僕は病院で手当てを受けていた。女の看護師さんが僕を優しく手当てしてくれて、弱い自分を見せてる気がして気恥ずかしかった。  幸いにしてその日のうちに帰っても良いと言われた。ただし、足を包帯でぐるぐる巻きにしなくてはならなかったが…… ♢  体育祭の翌日、僕は松葉杖をついて登校した。教室に入るなり、沢山のクラスメイトが僕を心配してくれた。  席に着くとクラス委員長がやってきて 「その足、大丈夫?」 と他の人と同じ様に心配をしてくれた。 「完治までには二ヶ月ほどかかるって言われたよ」 「うわぁ、それは気の毒だね」 と端正な顔に皺を浮かべた。  ついでながらここで述べさせて欲しい。  彼女、天野美月は明るい髪色の可愛らしい女の子で、クラス委員長を勤めている。  彼女は随分と積極的に僕に話しかけて来たので、女性恐怖症が酷かった入学当初から話す事があった。 「そう言えば遠野君、カッコよくなったよね」 「え? そうかな?」 「うん、凄くいいと思うよ」 と胸元でギュッと両手を握る。  別に僕は君に評価されても嬉しくないんだよなぁ…… 「そういえば天野さん」  僕は話題を逸らしたくて切り出した。 「何かな?」 「文化祭のお化け役、これじゃ出来そうにないよ。ごめんね」 「うーん。でも、せっかく遠野君が進んで引き受けてくれたわけだし、私としてはやめて欲しくないな。あ、でも遠野君の身体の方が大切だよね……?」 「ハハ、やっても良いならやりたいけどさ。皆んなに迷惑掛けたくはないんだよ」 「そっか……。そしたら役割を組み直すから、またその時に話そうね!」 「うん、頼むよ」 ♢  数日後の事。  相変わらず足は折れたままで、文芸部部活は部室棟三階にあって登るのはしんどかった。  途中、誠司が 「お、遠野。大丈夫か?」 と手伝ってくれなかったらもっと大変だったろう。  部室に着くと、すでに冬原さんと桜木さんがいた。冷房の効いた部屋で、贅沢にも二人は紅茶を飲んでいた。 「よ、皆んな」 と誠司が先にドアを開けて、 「やあ、こんにちは」 と僕はいつもの様に笑って入った。 「相変わらず痛々しいねー。階段登るの大変じゃない?」 桜木さんは眉をハの字にして言った。 「へへ、もう慣れちゃったよ」 と笑いかける。 「本当に骨折してしまったのね……お気の毒に」 冬原さんも心配そうにしてくれる。 「ところで、文集の方はどうかな?」 と誠司が言うと、 「届いてるよー!」 と桜木さんが元気に段ボール箱を引っ張り出して見せてくれた。  中にはギッシリと文集が詰まっている。 「全部で50部。去年と同じ数だけど、売れ残ったらやだなー」 「平気よ。少なくとも私の作品は面白いから」  冬原さんはキリッと頰角を上げて笑う。  可愛い。 「ねえ、二人とも。早速だけど、文化祭の売り子のシフト分け、しちゃおうよ!」 「そうね。早いうちに決めておけば、クラスでのシフトと被らなくて済むようになるわ」 「そうだな、さっさとやろうぜ」 「僕、板書やるよ」 「良いよ、俺がやる。お前は座ってろ」